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最高裁判所第三小法廷 昭和46年(オ)151号 判決

主文

原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人古賀幸太郎の上告理由第一点について。

第一審判決中所論の更正にかかる部分は、同判決の記載および記録に照らして明白な誤謬であつたものと認められるから、第一審裁判所のした更正決定は正当である。そして、同判決主文引用の別紙一図面表示の各点は、別紙二ないし四(右更正決定を含む。)記載の基点、方位および距離に基づき、現地について特定するに足りるものと認められるから、右主文が、明確でないとはいえない。したがつて、同判決を正当として控訴を棄却した原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点について。

本件係争地が被上告人ら(被上告人ら被承継人堀川コハキを含む。以下同じ。)所有の字大谷二五四二番の二の土地に該当するとした原判決の事実の認定・判断は、挙示の証拠に照らして肯認することができ、右認定・判断の過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および右事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

同第三点について。

原判決の認定したところによれば、本件係争地は被上告人らの所有に属し、上告人は、苗木を植え付けこれを維持管理するにつき正当な権原を有することなく、本件係争地内に本件杉および桧苗木を植え付けて同地を占有しているというのである。しかるに、権原のない者が他人の土地に植栽した樹木またはその苗木は、民法二四二条本文の規定に従い、土地に附合し、土地所有者がその所有権を取得するものと解されるから、右認定によれば、本件苗木は上告人の所有に属するものではなく、したがつて、上告人において被上告人らに対しこれを収去する義務を負うものではないというべきである。してみれば、上告人に対し本件苗木を抜去して本件係争地を明け渡すことを求める被上告人らの請求を認容すべきものとした原判決は、右規定の解釈適用を誤り、ひいて理由にそごをきたしたものといわなければならず、論旨は理由がある。

よつて、原判決は破棄を免れず、さらに審理を尽くさせることを相当と認めて本件を原審に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 松本正雄 裁判官 天野武一)

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